「思い出してごらん?
星崎さんが、臨床心理士の資格を 取りたいと思った時のこと を……」
「はい……」
リョウが亡くなった時のことを、 ミズキは思い出す。
そして、今、強く思う。
家族でなくても、人は大切な誰か と共に生きている。
それは恋人や友人だったり、赤の 他人だったりすることもあるかも しれない。
そういった大切な存在を失った 時、人は冷静ではいられなくな る。
以前のミズキのように、誰にも心 を開けなくなってしまう場合もあ る。
その反面、親しい人間の存在もな く、孤独に生きている人も、世の 中には大勢いる。
事情は様々だが、彼らは、他人と のつながりを諦めている。
ミズキは将来、そういう人々の心 の傷を癒していきたいと考えてい る。
「人の心に、明かりを燈すような カウンセリングがしたい。
そういう臨床心理士になりたいで す」
「大丈夫だよ。星崎さんならなれ る」
笹原はミズキの心を見透かしたか のようにこう言った。
「傷つきやすい人は優しい人なん だと、僕は思ってる。
傷ついた経験が多いからこそ、人 の痛みを理解し、共感する力が育 まれるのではないかってね。
カウンセリングに大切なのは、相 談者の悩みに親身に向き合う心と 共感力。
相手の話を聞き続ける根気。
相手の振るまいに付き合える辛抱 強さ。
普段の星崎さんを見てると、そこ は完璧にクリアーできてる。
あとは、自分に自信を持つことが 出来れば、星崎さんはきっと、大 丈夫」


