幸せまでの距離


「星崎さん次第だよ」

笹原はにこやかに言った。

ミズキは彼の顔を食い入るように 見る。

「僕も、カウンセリングをする生 活の中で、この仕事は自分に向い ていないんじゃないかって悩むこ とは、よくあるよ」

ミズキは目を丸くし、

「先生のように立派な方でも、そ んな風に考えるんですね……」

「もちろんだよ。

僕もただの人間であり、全知全能 の神ではないから。

相談者の話を聞いて、泣きたく なったり落ち込むこともあるよ」

笹原は冗談ぽくそう言うと、真っ すぐな目で、

「でもね、これだけは自信を持っ て言える。

絶対に相談者を見捨てないぞ、っ て」

「見捨てない……?」

「悩みを抱えている人は、時に自 分を見失って、我々に暴言を投げ つけたり、ウソをついたりして、 こちらの出方を試してくることが ある。

泣くことに終始して、時間内に話 を出来ないこともあったりして ね。

そこでこちらが投げやりになった り感情的に拒絶してしまったら、 カウンセリングは成立しないん だ。

相談者にどういう対応をされよう と、どっしり構えていることが大 事」

「どっしり構える……」

ミズキは笹原の言葉を復唱する。