幸せまでの距離

『あんたなんて、愛する価値もな い!

早く死ね!!』

幾度となく実の母親に言われたセ リフと、メイにとって思い出した くない過去が、瞬く間に彼女の脳 内を侵食する。

こんな人間だから、私は愛されな いの――?

『メイは素直で可愛い』

実の父親が、メイの体をまさぐ り、もてあそぶ。

「わあああああああー!!」

現実なのか、

夢なのか、

幻覚なのか、

区別がつかない。

今、直に体験していることのよう に、生々しい感覚が、メイの体を 貫いた。

「いやだああ!!」

メイは大声で叫んだ。

まとわりついてくる手の感触を振 り払うため、泣きわめく。

この幻聴は、他でもない、メイ自 身の脳内から発せられたもの。

しかし、メイにとっては辺りの空 間から聞こえてくるように感じ た。

メイは正体が見えない声の主に対 抗するため、不安定な足取りで立 ち上がると、本棚におさめられた 数少ない本を次々と両手に取り、 力の入らない手で部屋の外側に向 かって投げ捨てた。

それらは壁を打ち付け、厚みがあ る本ほど、大きな衝撃音を立て る。

投げる本が無くなると、次はベッ ドや学習机に手を伸ばし、目覚ま し時計やケータイ電話、ハサミや ホッチキスを投げ続けた。