幸せまでの距離

自室のアパートで、トウマは憂鬱 (ゆううつ)を晴らすように大きく 息を吐く。

窓の外に広がる清々しい青空に反し て、彼の気持ちはどんよりと暗かっ た。

かつて役者として栄光をつかんだ穂 積翔子に憧れ、がむしゃらに夢を追 いかけてきた。

歳をかえりみずその夢を持ち続けて これたのは、カナデという年下の彼 女が献身的に支えてくれたおかげ。

カナデの家が裕福だと知っているト ウマは、まさか彼女が金銭を得るた めに身売りをしているとは夢にも思 わず、彼女の援助を受けてきた。

演劇の稽古に集中しながらこのア パートで衣食住に不自由しない生活 が出来るのも、全てカナデのおか げ。

しかし先月、トウマの夢と心が揺ら ぐ出来事が起きた。

先輩に連れられていった居酒屋の女 性店員と、意気投合したのである。

相手はまだ18歳。

自分より10歳近く年下の女の子だ が、社員として笑顔で働く彼女の姿 は、叶わない夢に疲れたトウマの気 分を癒してくれた。