幸せまでの距離

針の先端のように鋭いメイの声は思 いのほか教室内に響き、帰宅の準備 をしている学生たちがまばらに視線 をやってくる。

「メイちゃん、本当にごめんね」

周囲の目を気にして、カナデは上目 遣いで静かに謝った。

二人から不穏な空気を感じ取り、学 生達は声をすぼめてメイとカナデを 遠巻きに見ている。

「……あ、そ。勝手にしな」

メイはそれだけ言うとカナデを教室 に残し、一人帰路を目指した。

星崎家の一員になる前のメイは、自 分を嫌う人間とも行動を共にしてい た。

一人になるのは怖かったから。

ゆえに、前の自分だったらこうして カナデに食いついたりせず、相手の 悪意に“諦め”を覚えてやり過ごし ていただろう。

だけど今は、家に帰れば姉のミズキ がいる。

血のつながりはないが、愛情を持っ てメイを養ってくれる両親も……。

学校で孤立してもかまわない。

メイは強く踏ん張ることができた。