幸せまでの距離


男との同居から一ヶ月が経つ頃、翔子はようやく男の本性に気付き、二人は修羅場を迎え、別れに至った。


メイには、優しかった男とのさよならを悲しむヒマなど与えられなかった。

「アンタはどんだけ私の男を奪ったら気が済むのよ!!」

男の裏切り行為に激昂(げきこう)した翔子は、何もかもをメイのせいにした。

メイを裸にして、あらわになった肌の至る所に火のついたタバコの先端を押し付ける。

「二度と男に抱いてもらえない体にしてやる!」

「お母さんやめて! 痛いよぉ!!」

泣き叫ぶメイの声は、夜風の中に消えていった。

ごめんなさいと謝る余裕もないほど、血の雨が降る。

タバコが切れたら、翔子はメイの体を足で蹴り飛ばした。

この借家は一軒だけ離れた土地に建っており、商業施設もやや遠くにあるため、夜間の人通りは極めて少ない。

誰も、メイの苦しみに気がつかない。


何度、そうして肌を焼かれたのだろう。殴られたのだろう。

メイは痛みで気を失い、翌日の午後まで裸のまま冷たい畳の上に倒れていた。