幸せまでの距離


「痛みを感じさえすれば同性を好きになる思考も無くなって、『本来の男性』に戻れるって思ったんだ。

死にたかったわけじゃないし、別にそれ以外でつらいこともなかった。

リストカットしてるなんて思われたくなかったし、周りに余計な心配もされたくなかった」

「それで、服に隠れる上の方ばかり切ったの?」

リクはショウマの腕を両手でつかみ、ジッと見つめた。

もう傷はふさがっているが、跡は一生消えないだろうし、見ているだけで痛々しすぎる。

ショウマが自分の思考に苦しんできたことが、よく分かる。

「同性愛を否定するヤツは多い。

でも、俺は世の中の人に『こんな男もいるんだ』って受け入れてほしいんだ。

そう願うなら、俺も他人の考え方を受け入れなきゃ筋が通らないだろって感じで。

……そうしなきゃ、俺が、同性愛者のみんなが、世間から差別を受けて排除されていくようで、こわいんだ……」

リクは口を一文字に結んだまま無言で何度もうなずき、ショウマの意見に肯定の気持ちを示した。

気持ちを落ち着け、ポケットに入っていた青いハンカチをショウマに渡す。

「そういう話、今まで聞いたことなかったから、正直ビックリはしてる。

でも、ショウマが同性を好きになるのを否定する気ないから。

世の中から排除されるなんて、絶対ないから!」