幸せまでの距離


ショウマからフワリと漂ってくる酒のにおいで、リクも気分から酔いそうだった。

ショウマに影響を受け、自分の心の内側をさらす。

「誰かのために何かをしたいっていう思いは綺麗な部分ばかりじゃなくて、時に暴力的な思いも生み出すんだよ……。

許せないとか、憎いとか、殺したい、とか……」

ショウマの肩がピクリと動く。

重たい身をリクから離し、

「リクにも殺したい人とかいるんだ」

と、驚きを多分に含んだ目をした。

リクは苦笑する。

「あるよ。現在進行形で、『あの人さえいなければよかったのに』って、よく考える。

人からはいい子に見られるし、大人も俺のことそう思ってるみたいだけど、けっこう嫌なことも考えるよ。

だから、メイの言おうとしてることも分かる気がするんだ。

『私はあんたが思うほど純粋じゃない』って……。

でも、自分に対する他人からの評価と、自分に対する自己評価が違うのは当たり前だし、自分のことが分からないなんてよくあることだから、人からの評価も受け止めなきゃって思ってる。

それに、実際殺すのと『殺したい』は別モノじゃん?

生まれた感情をぜんぶ殺したりしたら、それこそつらくなるんじゃない?」

ショウマはリクの鮮やか過ぎない言葉をじっくりかみしめ、吟味(ぎんみ)する。

「……なるほどな。リクはリクで考えてんじゃん。

俺もリクみたいに生きたいよ。

……でも、ダメなんだ」