幸せまでの距離


シラフのショウマはそれはそれで個性的だが、アルコールに理性を奪われた彼は別の意味でこわい。

“ここ、個室でよかった……”

リクは友人が飲酒をしているのを初めて見て、アルコールの威力をまざまざと思い知らされた。

ショウマは坐(すわ)った目で、

「俺はさぁ、知的で紳士な男になりたいんだよぉっ」

と、理想の男性像を口にしたかと思うと、テーブルを挟んで向かいに座っているリクの隣に、ヨロヨロした足取りで移動する。

「こっち来るの!?」

リクは冗談半分、本気半分で、ショウマの席移動を拒んだ。

6人用テーブルだったのが災いした、と、心底思う。

父親も酒を飲む人間ではないから、リクは酔っ払いにどう接していいか分からず困り果てた。

出来ることならここから離れたいが、ショウマはリクの迷惑などおかまいなしにリクの真横を陣取る。

「リクー。感情ってのは面倒だよな。

それがあるから、人は理性的な判断ができなくなって、感情で物事の良し悪しを決める。

本来、物や人の価値って全部いっしょなはずだろ?

人間は感情だけでそれをえり好みして、差別したり嫌ったり、イジメたりする。

俺はそんな輩(やから)にだけはなりたくないんだよぉっ」

ショウマは勢いあまってリクに抱きついた。

「わかった! わかったからっ!

とりあえず、離れようよっ」

リクは全力でショウマを引きはがそうとしたがビクともせず、あきらめた。