幸せまでの距離


「ショウマは、ちょっと難しく考え過ぎじゃない?」

リクは自分の考えを口にした。

「ショウマの言うこともよく分かるけど、いきなり他人の考えを全部理解するなんて無理だよ。

少しずつ理解しあうから良いっていうかさ……。

何て言ったらいいんだろ」

難儀な話題に、リクは向こう1年分くらいの思考力を使っているような気がした。

ショウマは、ひとつひとつ言葉を選んでゆっくり話すリクを、冷静な面持ちで見ている。

「衝突するしないは大きな問題じゃなくて、もしぶつかってお互い嫌な気分になることがあっても、『ああ、あの人はそういう考え方なんだなあ』って思うことが大切なんじゃない?

俺も知らず知らずのうちに熱くなっちゃうことあるから偉そうなこと言えないんだけど、相手と仲良くなるには、多少自分が折れるというか。

自分的に譲れないとこはつぶかってでも主張するっていうか、貫くとこは貫く! みたいな感じでいいんじゃないかな。

って、何言ってんのか分かんなくなってきちゃった」

リクは人差し指で頬をかいてヘヘヘと笑う。

ショウマが言葉を返そうとした時、個室の扉が開かれ、注文していた物が何品か運ばれてきた。

やってきた店員はメグルではなく、高校生くらいの男性アルバイターだった。

彼は「ごゆっくりどうぞ」と、初々しすぎる程のはにかみフェイスで、リク達の個室を出ていった。