「俺もなんか、いろいろ余計な事考えちゃってて」



「…………うん」



「でも、今日凛が俺に怒ったとき、ふっきれた」



「……うん」



「だからさ、結婚しよう?」



「うん………………うん?」



はぁっ!?



脈絡がまったく読めない言い分に、私は思わず顔を上げて彼を凝視してしまった。



いや、「だから」でつなげることじゃないでしょ?



「んじゃ、此処」



そう言って目の前に滑ってきたのは、「婚約届け」と大きな字で書かれた書類。



必要事項はもうほとんどうまっていて、後は私のサインと印鑑だけ。



「…………用意の早いことで」



「まあね」



少しの嫌みをこめた言葉にも、彼はにっこりと笑うだけ。



そんな私も、頬がゆるんでしかたない。



朝あんなに怒っていたのが嘘みたいだ。