ポーン



エレベーターが気の抜けるような音と共に一階につく。



よし、と気合いを入れ直して喧噪の街中へと歩きだした。



今日は帰ったらやらなければいけないことが山ほどある。



まずは荷造り、あとはしばらくの料理もつくっておかないといけないし、洗濯もすませておかないと。



協力してやっていたとはいえ、彼に家事をまかせると五回に一回くらい頭を抱える事態がおこるのでほとんど私がやっていた。



これから二週間、彼、生活していけるのかな。



真剣に考えてしまったことに笑いがこぼれ、いつのまにか彼のことばかり考えるようになった頭に泣きそうになる。



信号待ちの大きな交差点で私はたちどまった。



信号は赤。どうやら変わってしまったばかりのようで、全然青に変わる気配がない。



「…………はぁ」



こらえきれなかった溜息が、ひとつおちる。



「凛ーっ」



遠くかれ自分を呼ぶ声が聞こえたような気がしてふりかえる。



すると、私にむかってぶんぶんと手をふる同僚の姿を発見し、私はその子供らしい仕草に笑いをこぼした。