「それにしても、あんまり驚かなかったね」
「え?」
印鑑を取り出してもってきた私に、なんでもないような口調で彼はたずねた。
でも顔をみれば、拗ねているのは一目瞭然。
なんだか可愛い、と思ったけど、男の人にいっても嬉しくないだろうから、くすりと笑うだけにとどめた。
「まあねー」
さっきの彼のマネをして笑う私に、彼は酔ってるでしょ、と苦笑い。
そうかもしれない。
だって何でかわからないけれど、おかしくてしかたがないのだ。
もっとロマンチックなプロポーズがよかったとか
何で酔っぱらってないの、とか
どんな経緯があったのか、とか
聞きたいことや言いたいことは沢山あるけど、とりあえず。
「何か飲みます?旦那さん」
「コーヒーちょうだい、奥さん」
顔を見合わせて笑って。
幸せだからこれでいいや。
『お幸せに、三嶋凛サン』
式が楽しみだと笑った美咲の恋に、今度は私が首をつっこんでみようか。
END.