ポツポツと降っていた雨はやがて、バケツをひっくり返したような大雨になっていた


たくさんの人が行き交う通りを、オレはびしょ濡れで歩いていた



「寒…」



軽く悪寒が走ったが、雨宿りしようとは思わなかった



「…あーあ…せっかく別れたのになぁー―」



目を閉じて思い出す



オレ…なーんも出来なかったよなー…


キスも…

それ以上も…



英子が知ったら驚くだろうな―…



あれがオレのファーストキスだって…



苦い思い出に想いを馳せていたら、足元に小さな子猫が擦り寄ってきた



「…お前も一人か…同じだな…」



オレはしゃがんで、子猫の頭を撫でてやった