一人になったあたしは、体育館片隅であたりを見回した
少し古ぼけた暗幕―
皆の足跡が付いた舞台上―
『卒業式』という文字が大きく踊っている垂れ幕―
なんだか全部が愛しく思えてくる
修人は大手企業会社に就職が決まっている
真菜は地方の大学に進学
あたしだけ、まだ何も決まってない
「…どーしよっかなぁ〜…」
天井を見上げ、小さな溜め息を漏らす
お嫁さんって、手もあるけど、一体誰に―
あたしは自分の阿呆な頭を呪いたくなった
「英子!!」
低い、でもどこか優しい声が背後から聞こえてきた
あたしはゆっくりと振り向くと、そこに立っている一人の男性に笑いかけた
「カイ!」
