5年後―



まだ風が少し肌寒い春3月―



とある高校は卒業式を迎えていた



「英子ぉ〜!絶対、絶対あたしの事忘れないでよ〜!?」



高校に入って出来た親友が、あたしに抱き着いてきた



「分かってるよ〜!真菜の事、絶対忘れない!」

「え、英子ぉ〜!!」



真菜は目から大量の雫を落として、あたしに抱き着く腕の力を強める



「英子!真菜ちゃん!明日カラオケ行かない?」



卒業証書を手に、一人のイケメン男子がこちらにやって来る



「修人!いきなりどうしたの?」

「ほら、皆卒業してバラバラじゃん?だからクラスの皆誘って、明日一日は朝から歌いまくんの」



そう、イケメン男子とは修人の事―


高校に入ると同時に身長がニョキニョキと伸び、顔はみるみる内に芸能人並になっていった



そんな修人は毎日のように靴箱にラブレターが入っていた



「はぁ〜い!あたし行く!」


真菜が涙を拭きながら、大きく手を挙げた



「英子は?どうする?」

「…う〜ん…修人ちょっと…」


あたしは修人の耳を引き寄せ、ポショポショと言葉を漏らした


「OK!OK!大歓迎!」

「本当に!?良かったぁ〜…」

「何、何!?なんの話?」



真菜があたしと修人の顔を交互に見る



「まぁ、明日になってからのお楽しみと言う事で♪」



修人が唇に人差し指を当て、片目をつぶった



「えぇえ〜!?気になるよぉ〜!!教えてぇ〜!!」

「秘密♪さ〜あ、他の奴らも誘わなきゃな〜♪」

「あ〜!待って〜!!」



体育館中央にいる女子達に向かって歩き出す修人に、真菜は走って追い付こうとしている



「…あ〜あ…もう卒業かぁ…早いなぁ…」