「先生遅れましたぁ!」


全力で走ったあたしは、肩を前後に揺らしながら、ドアを恐る恐る開けた。


「白川、何分遅れてると思ってんだ!」

「ごめんなさい!」


クラスメイトの笑い声に囲まれながら、あたしはゆっくり席に座った。

そしてあたしには疑問がひとつ。


「……なんで今日の曲あれなの?」


なぜか席が隣同士、そして選曲担当の草太に聞いてみた。

普段あまりそういうのに関心のない草太には、あんな流行りの曲、合わない気が……。


「周りの会話に耳を向けてみ?」


人の気も知らず授業を受けていた草太は、見下げたかのように言ってきた。

物凄くムカついたけど、大人しく耳を傾ける。


「ねぇ、今日の曲よかったよね!?」

「うん。この前発売したばっかりのだよね?」

「帰り買って行こっかな」

「いいね!」

「曲名なに?」

「ふふん、予想どおり♪」


同じように聞き耳をたてている草太が、勝ち誇った顔で言う。


「でもなんで急に……」

「白川、何喋ってんだ!」

「すいません〜!」