昼休みの残り時間を使って、俺は眠りに入ろうとした。



「桜井ー! 調子悪いなら、早退していいぞ。このあと体育と部活だけだからな」


担任が教室を覗きながら伝えてきた。

たぶん、俺がこのまま授業を受けたら倒れるとでも思ったんだろう。


自慢じゃないけど、俺は陸上でちょっと有名だ。

部活がひとつ減って、陸上に集中させたいから支障がないように、と陸上部顧問の柴崎にでも言われたんだろう。


俺は申し訳ないと思いながら、担任の言葉に甘えて帰ることにした。

カバンを持って教室を出ると、中にいる紀之が廊下に顔出して口パクしている。


お大事に、とか言うと思ったら



「有望な選手は対応が違いますね〜」


と、嫌味っぽいのを言ってきた。

ムッときて舌を出すと、紀之も舌を出しておどけたように顔を振る。

紀之が担任に頭を名簿で叩かれてるのを見ると、自然に笑みがこぼれてきた。