夢から醒めた夏

「さて、僕は向こうのダンボールの中身をパパッとやるんで、松中さんはこっちのダンボールをお願いします。」

部下とはいえ、鈴村のほうが慣れている。松中は悔しいだろうが、大まかな指示は鈴村がする。

「その前に、童貞は訂正するとして、遅刻常習犯のレッテルを君に授与しておく。」

「たった一回の過ちで!?」

思わず鈴村は突っ込んだ。

「文句あるの?」

「しかも不可抗力!!」


一日の収入が減った上に納得のできないレッテルまで貼り付けられてしまった。

「じゃあもうそれで良いので、さっさとやって休憩にしましょう。僕、タバコ吸いたいので。」

「それは私も同じだ。」

今度ばかりは鈴村が溜息を付いた。

松中の不思議さに対する物ではなく、松中の冷静な態度が気に食わなかったのだ。

「ちょっち、待っててくださいね。」


そういうと、斉木の元に走って行き、
何かを相談した。


しばらく、松中が立ち尽くしているとニヤニヤした斉木と共に鈴村が帰ってくる。


「松中ちゃーん!ニコニコチャージしよーよ!おじちゃん疲れちゃった。」

ニヤニヤがとまらない斉木にはポンポンと松中の頭を叩きながら言った。


「いや、それは斉木さん一人でいけば良いの…」

斉木を拒絶するように言う松中に
鈴村は割って入った。


「いや、これは松中さんの休憩なんで。行きますよ。三人でちょっち話しましょうよ。タバコ、吸いたいって顔に書いてありますよ。」


何かを納得したのか、タバコへの欲に負けたのか、その一言で松中は了承し、喫煙ルームへ三人で入る。


「鈴村さんはなんのために大学へ通っているんですか。」

初めて口を開いたのは松中だった。

「僕は教師になりたいんです。だから大学生なんすよ。」

鈴村は、松中と少しでも打ち解けようと斉木にニコニコチャージを提案した。少しは効果が現れてるのかと安心した。

「最近のガキは大変だぞ?タバコ吸ってたり刺青してたり…この前客に来たガキなんかな、メリケンサックはめてたぜ?」

メリケンサックとか時代遅れー!等と笑っていた二人を一瞬にして凍りつかせた人間がいた。

紛れもなく松中だ。

「私、普段メリケンナックルならつけてますよ。」

男性陣二人はこの中学生にも見える少女に恐怖した。

「やべぇ、俺…腰抜けて立てない…」

斉木のか弱い発言に対して

「なら、そこで一生暮らしててください。」

そう一蹴してから鈴村は続けた。

「松中さんには夢とかないんですか?」

松中はしんみりしながら言った。

「あるよ。結婚したい。」

「結婚したいってまた…相手探すところからっすよーあはは」

鈴村のちゃらけた態度に舌打ちで返しながら松中はペアジッポを見せて来た。


仰天している鈴村の肩を叩きながら斉木が言った。

「残念だったな。そんなことより起こして…」

「余計な一言があったので却下です。」

また鈴村は一蹴した。


そんな二人を見ながら、松中はつぶやいた。

「それにしても、ここは人が多いですね。」