何分経っただろうか。

突然の少女による上司発言で完全に鈴村は社員用入り口の前でダビデ像と化していた。


気付けば、奥で斉木がニヤニヤしながらこっちを見てる。


「ちょ…斉木さん!どーゆーことですか!」

鈴村は自らの石膏を剥がして吠える。

「どーゆーこともなにもそーゆーことだ。」

斉木のニヤニヤはおさまることはなかった。

「ってか、僕は童貞じゃないですよ!」

自らの弁解に鈴村は必死だった。

「あ、童貞は見た目からして判断しました。間違っていたなら申し訳ないですが、もしそうなら、私は奇跡というものを初めて見ているんだと思います。」

鈴村の弁解が完全に負の道へと流されてしまった。

鈴村はその日、久しぶりに泣いた。

「どうでも良いけど、お前…遅刻だぞ。何分ボーッとしてると思ってるんだ?」

斉木は困った顔で言った。

鈴村は時計を見て慌てた。

慌てながら、捨てゼリフを吐く様にロッカールームへと消えた。


「上司が変人ばかりだからだ!」




残された上司二人は溜息を付いていた。

「すまんが、あれが君の部下だ。ま、ほとんど教える業務はないってゆーか…実は俺なんかより仕事はできるから、教えることはなんもない。だが、人間性がな…」

「わかりました。人間性…そうですね。まずはあのちゃらけた態度から改善しますかね。」

斉木はその発言に驚いた。

「え?そこなの?」

「えぇ、見ていてムカつきますから」


これはまたとんでもない人が来たと斉木は再び溜息を付いた。