「…村…鈴村…鈴村!」

鈴村と呼ばれたその男はハッと気付いた。

「ふぁ、はい!ど、どうしましたか!?」

怒りに打ち震える鈴村の上司に鈴村は寝ぼけたような声で答える。

「まぁたボーッとしやがって…バイト中に何してんだよ!」

上司である斉木はご立腹だ。

「いや、すみません。なんか昔の夢を思い出していて…あの、すっごい怖かったんですよ?起きたらお父さんにしがみついてて…それで…」

鈴村の不思議な言い訳に斉木は割って入る。

「はいはい怖いのはわかったから。ま、改装中だからお客さんいないし別に良いけどよ。手は動かしなさい。」

斉木は続けた。

「それからな、新しく社員さんが入ってくるそうだ。どんな人かはわからないけど、俺より厳しい人だったら今みたいな怒り方じゃ済まないからな!」

斉木はニヤニヤしながら言った。

「斉木さん、偉く上機嫌じゃないっすか?なんかあるんすね?」

斉木のニヤニヤに鈴村は用心深く聞いた。

「それがな、新しい社員さんは若い女の子なんだ。彼女にフられたばっかのお前には良い情報だろ?」

「う…傷口を広げる様な…もう良いです!真面目に仕事しますよーだ。」

鈴村は仕事にぷいっと振り向き仕事を始めた。