「おい、濡れるぞ?」

気づけば俺は話しかけていた。

「あの…えっと…。」

女は困った顔をしている。

「猫に傘やったんだろ?
お前いいやつだな。」

って何言ってんだ俺。

「傘、使っていいから。」

それだけ言って俺は走って
逃げようとした。これ以上
この女といると、自分が
自分じゃなくなるような気が
したからだ。