「なんにも聞かないんですか?」 「なんで?」 こっちが聞いたのに逆に言い返されてしまった。 彼は何にも聞かない。 名前も 年齢も 泣いていた理由すらも 「聞かない。 アンタ、辛そうだから」 わかってたんだ。 わかってたんだ。 この人。 「でも、名前くらいは教えてよ」 「聡田 蓮(ソウタ レン)」 「俺は八木 葵 (ヤギ アオイ)」 また、彼はお好み焼きを食べる。 「葵でいいよ。 俺も蓮って呼ぶし」 なんだか、彼は いや葵は、私をこの闇の中から救ってくれるんだってそう思った。