さむっ。
もう、11月にもなるんだから
当たり前か。
そう思いながら
ボロいマンションの階段を
降りていく。
するとそこには
見たことのある男の人の
人影がある。
「優‥翔?」
あたしが声をかけると
その影はゆっくりとあたしへと
顔を向ける。
「おせぇよ、美結。」
2週間前と全然変わらない
優翔の笑顔。
あたしの大切な笑顔。
「なにしてんの‥?」
「なにって美結のこと待ってた
んだろ。美結、何回電話しても
でねぇから。」
優翔はあたしの頬へと
手を伸ばす。
ものすごく冷たい手。
どれだけの時間ここに
いたのだろうか。
「ごめんね、優翔。」
あたしはそう言って
頬にある優翔の手をそっと
包んだ。
「ごめん。」
「謝んなよ。何かあった?」
優翔は優しい声で
あたしへ問いかける。
「ごめん、優翔。あたしとは
もう関わらない方がいい。」

