「私、彼氏いるの」

「………ぇ、は…え!?彼氏!?」

大きな菜南子の声に反応したクラスメイトたちの意識がこちらに向けられる。

「ちょっ、菜南子、声が大きいっ」

「ぁ……ごめん」

そりゃ急に彼氏がいるだなんて言われたら驚くでしょうよ。
なんだか落ち着きがない菜南子を見て、ちょっと罪悪感を感じる。

あぁ…やっぱりこんな嘘つかなきゃよかったかなぁ………。

ぐるりと周りを見渡すと、クラスメイトたちはもう其々で会話を再開していた。

…一人を除けば。

「萌香!」

明るいアメジスト色の髪をキラキラと靡かせながらもの凄い形相でこちらへ歩いてくる男が一人。

それを見て菜南子は面倒臭そうに目を細めた。

「私、ちょっと席外すわ。…あとで詳しく!」

「えっ、ちょっ……!行かないでよ!」

菜南子は一度もこちらを振り返らずにそそくさと教室を教室を出て行ってしまった。