心臓が高鳴るのが分かった。 その名前を忘れるわけがない。 あたしは震える人差し指でゆっくりと通話ボタンを押した。 ――もしもし 久しぶりに聞く低く落ち着いた声。 ――あ、も、もしもし? あたし、なんでドキドキしてるの? ――悠稀? ――うん… ――ひさしぶりだな。 ――うん… あたしたちの会話はそこで途絶えた。