全く仕事に身が入らない…。



さっきの男は誰なんだよ…。
晴のなんなんだよ…。



佐藤がずっと話しているが、俺には聞こえてなかった。



やっぱり晴は普通の恋愛がしたいのかな…。
許されない恋愛なんて、晴には重いのかもな…。



「先生は好きな人いますか?」



佐藤のその質問に、やっと耳を傾ける。



好きな人……思い浮かぶのは、晴だけ。



でも、晴は…?



俺との恋愛なんて
もう疲れちゃったんじゃないのか?



聞きたい、晴の声が。
会いたい……晴に。



「先生?聞いてます?」



「あ、あぁ…ごめん。聞いてるよ。好きな人だろ?いるよ、すごく大切な人。」



俺が答えた瞬間、佐藤の表情が険しくなった。



「そうですよね…。先生、かっこいいもんね。」



なんだか嫌な空気になってしまったような…。



「そ、そんなことないよ。佐藤だって美人さんだろ。」



なんとなく言っただけだった。



たしかに佐藤は美人だが、俺の中ではいつだって晴が一番で。



こんなこと言うつもりなんてなかったのに…。



佐藤が顔をあげたと同時に、俺は軽すぎた自分の発言を後悔した。