ベッドに晴を寝かせる。



桜井は凄く心配そうだ。



「なぁ、桜井。晴なんか言ってなかったのか?具合悪いって。」



「言ってなかった…けど。相当、追い詰められてたみたい。」



追い詰められてた?



何に…?



「どういう意味だ…?」



俺が聞くと、桜井は顔をしかめた。



「晴だけじゃなく、先生も相当鈍いんですね。」



意味が、分からない。



一体、何の話だ…?



「先生?晴を、ちゃんと見てあげないとダメですよ?」



「え、あぁ…」



「“晴”って、呼んじゃったんですし…。」



………あ。



俺は、いつも園原と呼んでいた。



周りに、怪しまれないように。



晴と呼ぶのは、二人きりの時だけだったのに…。



焦って晴と呼んでしまっていたことにも、気付かなかった。



「体育に戻ります。先生は、晴の傍にいてあげてください…。」



桜井はそう言って扉の方へ歩き出した。



保健室を出る時、桜井は振り返って俺を見た。



とても、苦しそうな顔で…。



「先生と生徒の恋愛なんて、苦しいだけですよ…。」



え…………。



「桜井っ、お前気付いて……っ…」



バタン



俺が話し終える前に、扉は閉じてしまった。