人気のない屋上近くの踊り場。



先生はどんどん先を歩いてって、
会話もないままここまで来た。



「…ここなら平気か。」



そう呟いて、先生はやっと私の方を見た。



「久しぶりだな、晴!」



先生は満面の笑み。



私の名前、覚えてたんだ…。



無邪気な笑顔と、名前で呼ばれたことに
一瞬ドキッとしたのは顔のせいだよね。



「お久しぶりです…。」



私は小さく応えた。



「驚いたか?俺何も話さなかったもんなぁ。」



先生は楽しそうに話し続ける。



「あ、あの日は傘入れてくれてありがとな!晴と会えなかったら
今頃、風邪で寝込んでたかも…」



「あの!春川、先生…。」



私は先生の話を遮った。
私は、世間話をしたくて先生についてきたわけじゃない。