そっか…。
先生は、そういう風に思ってたんだ…。
考えてみれば、
私は先生のこと全然知らない。
誕生日、血液型、趣味、夢……。
何も知らない。
「…っ……」
先生が私の頬に触れる。
知らぬ間に涙がこぼれていた。
「晴…ごめんな…。」
そんな悲しそうな顔しないで…。
先生は教師になるのが夢だったんだね…。
私も、医者になるっていう夢があるから。
その気持ち、分かってるつもりだよ。
だから、
邪魔しちゃいけないよね。
夢の大切さは私も知ってるから。
先生のこと本当に好きなら、
先生の幸せを願うのが、私の役目でしょ?
涙は止まらないけど、私は笑った。
無理矢理作った笑顔じゃない。
ちゃんと、心から笑えたつもり。
「さよなら、湊先生…。」
それだけ伝えて私は走り出した。