ポキポキッ・・!


「ほーら、鳴った♪ ・・え?」


整体師気分で無邪気に笑う甲斐が
その顔を素に戻してる。

あたしはゼンマイみたいに首を曲げ
彼のその顔色が変わるのを呆然と見てた。


「ごめん・・、痛かったかな?」

「ううん、ちょっとびっくりしただけ・・。」

「・・・そうだ、足に薬を塗っとこ。
明日、ちょっとは軽くなるからね。」


何よ、大声出して・・みっともない。

大丈夫・・。
彼はちゃんと約束してくれたじゃない。

あたしはただ・・あの肩の掴み方、
あの力強さに覚えがあっただけ・・。


「有難う・・。」


そして読書用の薄灯りをヒトツだけ
点けて別々のベッドに潜った。

彼に背中を向けたくなくて、
真上を見て顔に少し布団を被ってる。


「・・・甲斐さん?」

「ん・・?」

「なぜ、甲本くんを?」

「ああ・・アイツとはチビの時から
空手教室でずっと一緒だったんだよ。」


ツインのベッドでの離れた会話。

甲斐には申し訳ないが、
彼の気持ちを知っているから
こんな事を聞くには丁度いい距離。


「・・意外。知らなかった・・。」


それにしても、あたしは本当に優弥の事、
笑えるくらい何も知らなかったのだ。
今更ながら呆れた女である。


「俺も聞いていい? 何で別れたの?」


答えるとも云ってないのに
矢継ぎ早に言うから答えてあげた。


「あたしの浮気。」

「えっ?」


いっそ、そう云った方がいい。

悪者でいた方が気が楽だし、
後、それ以上の理由も必要ない。


「ふふ、もう答えないですよ。
じゃ・・おやすみなさい。」

「・・・おやすみ。」


彼は一滴の酒も飲んでいないし、
あたしもシラフだ。

例え襲われたってナントカできる。
そう思い込むようにして眠る努力をした。

あたしの心の中は今、
優弥と、瑞穂の事、半々になってる。

甲斐にはあまり優弥の事聞かないように
しないと・・ダメだ。

いつまでたっても

忘れられない、
女々しい女でしかいられない・・。


「最後にもう1ツ」

「え?」