その客の顔を思い出してブルッと、
自ら抱えた体を身震いさせてしまった。


「・・・。」


火を付けて黙って聞いていりゃあ
彼は次々と男の事を暴露していく。


「マトモなエッチじゃ
満足しなさそうだとか。」

「もー・・やめて。」

「え・・、」


"またか"・・そんな想いをした。

結局は彼らも
あたしをマトモには見ていない。


( この男でさえもね )


純情な年下男を演じてボロを出した・・
・・だってもう何が言いたいんだか
ワケ解んない。

バカにされた気さえする・・。

二口吸っただけの煙草を
灰皿に押し付けると
あたしは下着を身に着け始める。


「・・さぞ、ご満足でしょうよ。
先輩より先にあたしを鳴かせて。」


まさか、服を着て
化粧も直さないまま
バッグを掴んで立つとは
思いもしなかったのだろう。

彼は慌てて身を起こし、
自分も着替え始めた。


「待てって・・、まだ、続きが・・!」

「タクシー拾うから平気よ。
じゃあね、バイバイ。」


バタン!!

ドアに八つ当たり・・。
ケリでもいれたいくらいだった。


「フウ」


国道沿いのラブホから歩いて出てくる
なんてあたしぐらいなもんだわ・・。

入ってくる車も
まだ少なくて助かった・・。

夜風になりかけの風が
惨めなあたしに更に追い討ちを掛ける。

少し歩いてみたが、
こんな時に限ってタクシーは通らない。

だから年下男になんか
関わらなきゃ良かったのよ、

無神経でさ・・。

そんな事をふつふつ考えて
歩いていたら家まで
後半分の道のりになっていた。

もう、タクシーを拾う気もない。
浅はかな自分への戒め・・。