「これ、店でも出せばいいのに。」

「値段が合わないから。」


彼が参加した為、
料理も手抜きするわけにも行かず
ブランチにゴルゴンゾーラを作った。

美味い美味いとパスタを平らげ、
おかわりの挙句パンまで齧ってる。

喰いっぷりの良さに若さを感じてしまう
年寄り気分なあたし。

その後、まだ誰も居ない川で
アベルと水遊びを目一杯楽しんでた。


「お帰り」


片付けをしていると
ビシャビシャな服のまま帰って来て、


「こいつ、スゲー泳ぐのな?」


アベルの頭をタオルで拭きながら
すっかり世話を楽しんでいる様子に
思わず目を細めてしまう。


「ガン・ドッグだしね。
レトリバーの手には水かきがあるのよ?」

「え! カッパみたい!」

「感心してないで、
ほら、これ着て・・風邪引くから。」


大きめのパーカーを彼に渡してから
アベルの体にオレンジXを噴霧。

丁寧にブラッシングして全体を
タオルで拭いてやっていた。

彼の視線に思わず振り向いてる。
ウォーターシューズを立ったまま脱いで、
何だか嬉しそうに見ているのだ。


「・・・なに?」

「ん・・? ふふっ、ナンカ
すんごく、イイ感じだなって。」

「え?」

「キャンプに来れる女の子って
なかなかいないじゃん・・?」


まあ・・虫が怖いとか、
面倒だとかって嫌がるコは多い。


「それに、キャンプなんてする
タイプじゃないと思ってたからさ。」

「・・・ああ。」


そう云われると実はちょっと嬉しい。
人からは、
似合わない趣味だと云われてたから。


「ほんと意外だった。」


そう云いながら
彼はシャツを恥ずかしげもなく脱ぎ、
折り畳み式のチェアに引っ掛けてる。

つい見てしまったあたしは
年下の男の胸板にドキッ。

本当に日焼け知らずの白い肌をしてる・・。

それでいて、さすがに普段から署内で
ウェイト・トレーニングをしている
だけあって、プチ・マッチョだった。

彼はその素肌にパーカーを来て
やっとチェアに腰を深く降ろしてる。


「ねえ? 前から
気になってたんだけど・・。」