歴代の彼氏でさえ、
親に紹介した事はない。

年上と云っても25歳・・
まだ、結婚も焦っちゃいなし
したいとも思っていない。


「どうでもいいけど・・
遠回りなんじゃないの?」

「俺の事が心配?」

「フ・・、横断歩道は
手を上げて渡んなさいよ。」

「子供かっ・・。」


緩やかな坂道、歩を合わせて
ゆったりと横を歩く彼を見ずにからかう。

わかんないの?
オシリの青い男に興味ないって。


「もうそろそろ、散るかな。」

「え? ああ・・。」


長い上り坂の途中に咲く公園の桜。
おとついの雨で大部散っていた。

提灯の下、何処かのオヤジ達が
宴会の真っ最中である。


「・・・・何?」


彼が急にあたしの手を取って握った。
何気に握ったつもりでいたのだろう。


「・・これで両手に花。」


聞かれて、彼らしくもなく____

桜を見上げて照れを隠してた。


何よ、また独りで嬉しそうに・・。


「ねぇ・・二回ほど逝っとく?」


そう云われて繋いだ手を軽く握り返し、
少し淋しい笑みをチラリと見せた。


「一緒だったらね・・。」


無事に家の前まで送って貰ったが
彼は予想に反し"じゃあね"と云い
嫌に大人しく帰って行く。

帰っていく背中まで
なんだかとても冷えて見えた。

ムードもなく、ただ冷たくあしらわれて
傷つけちゃったのかもしれない。

変に・・気持ちがある様に
思われるよりはずっといい。

"一生懸命なのは最初だけ・・"

周りが放っておかない様な
イケメンは本当に苦手。


( ごめんね )


意外と広く見えるその背中に
心の中、軽く詫びてから家に入った。