隣の席のあいつ



自分のクラスの下駄箱に行くと、小畑が靴を履きかえていた。


私は何も言わず、何事もないような顔をして、自分の下駄箱を開ける。




小畑も何も言わない。

普段から怖いくらい無口な人。

何も言わないくらいわかってるけど。




なぜだか、さっき階段で逢ったのに何も言われなかったのには腹が立った。




・・・・・・・・・疲れてたのかな。

なんだか今日は小さいことですぐイラッとしちゃう。

今日はゆっくり休もう。




ひとつため息をついて、上履きを下駄箱にしまった。




小畑はもうローファーに履き替えていた。




「・・・・・・・・・レポートのこと、悪かった」





後ろで声がして思わず振り向く。

小畑は、少し気まずそうに下を向いた。




・・・・・・今のって、小畑が言ったの?




私は一切発言してない。

ここにいるのは、私と小畑だけ。



そう考えると、やっぱり小畑しかいない。




小畑は何も言わずに、昇降口から出て行った。




・・・・・・なんだろう。

不思議な気持ち。

小畑の声を聞いたのは、初めてだった。



小畑は小畑なりに、悪いと思ってくれてたのかな。

そう思うと、なんだか嬉しかった。