隣の席のあいつ




「小畑はどう?倉沢に勉強教えてもらうの」



先生は小畑の方を向き直る。

小畑は何も言わない。



でも、ゆっくりと1回だけ頷いた。




「おお、そっか。倉沢、小畑は希望してるみたいだけど、どうする?」




先生はまた私に向き直った。


・・・・・・どうしよう。

私が小畑に勉強を教える・・・?



私、人に勉強教えたことなんてないよ。

できるわけない・・・・・・。




断ろうとしたとき、小畑と目が合った。



小畑が私をじっと見つめる。




「・・・・・・・・・・・・・・頼む」


「・・・・・・え?」




小畑が小さい声でそう言った。



「珍しいな、小畑が喋るなんて」



先生は愉快そうに笑う。



・・・・・・小畑に言われたら、断れないじゃん。

こんなときだけ発言して、こいつずるい。

ずるすぎる。




「・・・・・小畑がいいなら、いいですけど・・・・・」



やっとの思いで、それだけ答えた。




上目遣いに小畑を見ると、小畑は表情を変えず、私を見ていた。

思わず目をそらす。



・・・・・・そんなに見られたら、断れないって。