食べようと口に運ぼうとしたときだった。
「っ、」
いきなり手首を引っ張られ、それは海里の口の中に吸い込まれていった。
「もーらい」
ニコニコと笑っている海里は、もぐもぐと口を動かしている。
「これうまいな」
「何勝手にとってんの」
ギロリと睨んだ。
お母さんの美味しい卵焼きは、あたしにとって最高の幸せなのに。
…いや、そうでもない。
実は兄貴の卵焼きのほうが好き。
「そんな怒るなって。これやる」
そう言って、箸につまんで突き出されたものは、唐揚げ。
「ありが、あっ」
だけれど、何故かそれは海里の口の中に入っていった。
「くれるんじゃなかっ、んっ」
いきなりのことにあたしは目を丸くした。
