それから月日は過ぎ、いつの間にか僕たちは出会って1年も経っていた。美冬の体は段々と少しずつだかが回復し、少しずつ昔よりも長くそとに出られるようになっていた。そんなとき、僕は「鈴子」という少女と出会った。鈴子は美冬とは対照的な性格だったが、どこか美冬と似たような部分があった。僕は美冬を愛していながら鈴子にも惹かれていった。
「利久さん、今日はずっといっしょにいれますか?」
そう聞かれて、僕は二人を騙している罪悪感に苛まれた。それでも二人を愛しいと思う気持ちを止めることはできなかった。
「ごめんね、鈴子。今日はずっといっしょにいることは出来ないんだ・・・」
「そうですか・・・ごめんなさい、わがまま言っちゃって。」
鈴子は悲しげに俯いた。
「鈴子、そんな悲しい顔しないでくれ。仕事が落ち着いたら、また会いにくるから」
そして僕はまた、罪を犯した。美冬も、そして鈴子も純粋に僕を愛してくれている。僕は彼女たちにまだ甘えているだけなのかもしれない。でもまだ彼女らの優しさに甘えていたい、そんな気持ちもあった。

そのあと僕は鈴子と別れ、美冬の屋敷へ向かった。中に入ると、美冬は中庭にいると告げられ、中庭へと向かった。美冬は中庭の椅子に座って、本を読んでいた。美冬は僕に気づいたらしく、こちらを見て、微笑んだ。
「利久さま、いらしてくれたんですね。」
「ああ、急に君の顔が見たくなってね。」
そう言うと、美冬はこのうえない嬉しそうな顔をして微笑んだ。
「今週はもう、貴方に会えないかと思っていました」
「僕も君にずっと会いたかった」
そう言うと、美冬は少し恥じらって、控えめに嬉しそうに笑った。
「さあ、外は寒い、中へ入ろう」
「ええ」

「美冬は・・・嫌にならないのかい?」
「え?」
「僕は君とずっといてやれない、一週間・・・いや、一ヶ月近く会えない時もあるんだ。それでも君は僕をずっと待っていてくれる。それを嫌にはならないのかい?」
そう言うと、美冬は少し黙りこんで、静かに口を開いた。
「そんなの・・・貴方に会えるのなら、辛くありません。貴方は毎日のように会いに来てくださるから、私は貴方を待つことしかできないから、全然辛くないんです。」
僕は美冬を抱きしめた。
(今はまだ・・・この穏やかな幸せを感じていたい)その状況を美冬は不思議がりつつも、そっと抱きしめ返してくれた。僕は美冬と鈴子に申し訳ないとおもいつつも、自分の情欲を抑えることはできなかった。
「愛してる、美冬」
その言葉を言うと、抱きしめた美冬の動きは一瞬止まり、前よりもきつく、きつく抱きしめ返してきた。
「私も、愛してます・・・利久さま」