【林檎SIDE】

 時は中学生になる前の春休みまでさかのぼる。
 私の家族と秋くんの家族はよく夕飯を一緒に食べることが時々あった。
 学校で「モテる男」の類に入る秋くんと幼馴染でいれることだけでも嬉しかったのに、一緒にご飯と食べることが出来て自慢すらしたくなった。
 何度目かになる夕飯会。
 何故かは忘れてしまったけど、私の妹 紫雨と、秋くんの弟 翔太が二人で紫雨の部屋で遊ぶといって私の部屋から出て行った。
 取り残された私と秋くんはただ黙って、出て行く二人を見るほかなかった。
 私の鼓動は高鳴る。
 夕飯会の後の4人で遊ぶ時 毎回、私の部屋で二人きりになると私を押し倒し妖しく笑う秋くんがいたからだ。
 あんなことを毎回されては意識してしまうし、「もしかしたら私のことが好きなのかもしれない」と、思ってしまう。
 しかし、その日は違った。
 私のベッドの上で。 二人で体育座りをしている。
 秋くんはなにもしてこなかった。
 いつもと違う秋くんを私は声をかけた。

 「えっと…… 大丈夫?」
 「……なにが?」

 少し遅れた返事。
 振るえる声音。
 私は小首をかしげる。

 「なにが……って いつもの秋くんとは違うから……」

 秋くんからは返事がなかった。
 かわりに、私の手をぎゅっと握って、離さない。
 そんなことから何分たったんだろう。
 秋くんは手を離し、私を壁に押し付けた。