あの花が咲き乱れる丘に行って三カ月後の休日、私はルチアの部屋にいた。
宿屋の手伝いはしなくていいかたお友達と遊んできなさいとエマさんに言われ、ルチアにちょうど誘われていたから来た。特にすることがあるわけではないし、宿屋の手伝いをしなくて大丈夫だろうかと無意味な心配をしてしまって落ち着かない。

「花楓、落ち着きなさい」
 
 ルチアに頭をはたかれた。ルチアはすぐに人の頭をたたく。私限定で、だけれど。

「うーん……。いっつも休みの日は手伝いしてるから何となく落ち着かないの」
「全く……まあ、することも無いから……。あ、ちょっと城を回りましょうか」

 そう言うと、私を立ち上がらせ部屋の外へ押し出していく。ルチアが一緒だから一般人が入ってはいけない所も見れるかもしれないと少しわくわくしたけど、ちょっと恐れ多い気もする。

「どこに行くの?」

 私が問うと、ルチアは秘密、と教えてくれない。……ルチアの事だから、もしかしたら牢屋とかに連れて行くのかもしれない。……牢屋はあんまり行きたくないな……。と思ったけど、階段を上っていくから牢屋ではないみたい。牢屋は地下だし。
 普段一般人が使っている階段とは違った階段を上る。こんな経験なかなか無いと思うと、少し得した気分。
 
 階段を最上階まで登っていくと、屋上庭園に着いた。普段見ている城の庭とは少し違う雰囲気。この庭は屋上にあるのに少し暗い雰囲気。でも、綺麗。一般公開されてる中庭は噴水があって、明るい色の花が多いけどこの庭は白とか紫とか濃い赤の花が多い。

「ここは私が一番好きな場所なの。落ち着きたいときはここに来るの」

 確かに落ち着きそう。人が来るわけじゃないだろうし、かすかに聞こえる水の音が心地いい。噴水があるわけじゃなく、奥に人口の小川が流れているらしい。屋上にすごい。

「確かに落ち着くね。休むにはぴったり」

 考え事をゆっくりするのにもいい場所だ。あの丘も静かだし、考え事するには良さそうだけど、外だからあんまりゆっくりできないよね……。