『勇気~~? 聞いてる?』

「あ?あぁ。」

『うふふ…じゃあ、明日待っているね。ちゃんと夜の7時に来てね?』

そう言うと楽しげに雅は電話を切った。
俺は暫くぼんやりと切れてしまった携帯を見つめたまま、明日起こるであろうイベントに思いを馳せていた。

「……ったく。冗談じゃないよ。今更この年でひな祭りも何もないだろう?」

そう、何より一緒に行われるあのイベント…。雅も俺が子どもの頃からアレを嫌っている事くらい知っていたハズなのに…。

「うえ~~~。かんべんしてくれよぉ。」

ボサッとベッドの上にダイブし、そのまま両手両足を投げ出して大の字になる。

「明日…かあ。おばさん、覚えていたんだなあ」

俺は明日をどうやり過ごそうかと頭を抱えずにはいられなかった。