「……書きづらい」
「でも俺、目悪いからこの距離じゃないと見えないんだ。」
「あとでまとめて見てくれればいいよ。」
「面倒でしょ。それとも…」
兄ちゃんが更に近づいてきて、顔が目の前に迫る。
「俺が近くにいちゃダメな理由でもあるの?」
ニコッと笑ったこの顔は、とても意地が悪い。
「~~~~」
「ん?どうなの?」
意地悪というか、もう残酷だよ。
好きな人がこんなに目の前にいるなんてさ。
「……だから書きづらいんだって」
「それだけ?」
「それ以外にないよ。」
「ふーん…顔赤いけど?」
「え!?」
思わず声を上げて、自分の顔に触れる。
「ははは、本当気持ちいいぐらい素直な反応だね。」
「……またからかった。」
「うん。面白くて。」
兄ちゃんの笑い声に、再び携帯の着信音が重なった。


