携帯の着信音が不意に鳴った。
「ん?俺の携帯だ。翔太、ちょっと待って」
「うん」
断りを入れてから兄ちゃんは電話に出る。
「もしもし?…ああ、友梨(ユリ)か。何の用?」
友梨…って確か兄ちゃんの元カノだよな。
だいぶ前に別れたはずだけど…。
「……しつこいね、キミも。俺にその気はないよ。」
やり直したいって言われてるのか………。
…いいな。羨ましい。
堂々と気持ちを伝えられる人が羨ましい。
僕は、受け入れてもらえるどころか、告げることすら許されないんだ。
何となく話を聞きたくなくて、シャープペンを回して気を紛らわす。
そしたら兄ちゃんの手が伸びてきて、頭をぽんぽんと撫でられた。
「悪いけど、キミと話してる時間はないんだ。」
そう言って兄ちゃんは電話を切ってしまった。


