その言葉に、僕は振り返った。
「ほんと!?」
「うん。可愛い弟のためだし」
「スッゴく嬉しい!!」
「翔太が一週間、俺の奴隷になってくれたらね。」
「……………」
兄ちゃんの言うことの80%は嘘だというのを忘れていた。
「……もういい」
「ははは、拗ねないで。翔太は本当にからかいがいがあるよね。」
「……………」
無視!無視だ、無視!!
絶対兄ちゃんなんて信用しない。
「翔太くーん?ごめんね、教えてあげるからさ。」
「…………ほんと?」
「ほんと、ほんと。その代わりバイト終わってからね。」
兄ちゃんの大きな手が頭を撫でてくれた。
この感覚は幼い頃から大好きだった。
安心する………。
「じゃあ行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい」
出て行く背中を見送って、僕は机に突っ伏した。
さっき彼女と別れたと聞いて、喜んだ自分がいた。
いつからだっけ?
兄ちゃんを独り占めしたいと思ったのは。
どうしてだっけ?
兄ちゃんを好きになったのは。


