あまりに唐突な出来事に動けないでいる僕を余所に、兄ちゃんは口の中へと舌を入れてくる。


「んっ……んむ!?」



さすがにこのままじゃダメだと胸を押し返すけれど、びくともしない。


僕だって男なんだしひ弱って訳ではないのに、抵抗なんて虚しく散っていく。


「んんっ……」



息つく暇も与えてくれないらしく、酸素を喪った頭はボーッとしていく。




やば………このままじゃ………



ガクッと膝が折れた身体を兄ちゃんは抱き止め、ようやく唇が解放された。



「ハァッ……も、いきな……ハァッ……ばかぁ……」
「馬鹿はどっち?浴衣着て、そんな蕩けたような顔して……誘ってるようにしか見えない。」
「なっ……それはっ、兄ちゃんがーー!」


文句を言い掛けた口を再び塞がれて、僕の身体は運ばれていく。


行き着く先なんて当然ベッドで……僕はあっという間に組み敷かれてしまう。



「やっ、ちょっ、待って!」
「無理、待てない。」



何て言ってくる兄ちゃんはいつものような、おどけた表情ではなく、欲情を孕ませた瞳を僕に向けている。



「そ、な……お祭り、は……?」


身体を滑る指先が、僕の身体を火照らせていく。



「ごめんね、お祭りはまた明日かな。」
「や、だめ……わたあめぇ……」
「うん、ちゃんと明日買ってあげるから。ごめんね、今はちょっと無理。」
「に、兄ちゃんのばか!」
「仕方ない、だって好きだから。諦めて。」



せっかく苦労して着た浴衣もあっという間に脱がされていく。


こうなったらもうだめだ。



でも、これも仕方ないのかも……。


だって、好きだから。僕だって兄ちゃんのこと、兄ちゃんに負けないぐらい。




【番外編:だって好きだから end】


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