試行錯誤を繰り返して何とか見られる形には着られたようだ。


不馴れな着心地に違和感を覚えながらも、兄ちゃんの部屋へと向かう。


「兄ちゃん、これでいーー」


中へ顔を覗かせると兄ちゃんも浴衣を着ていて、思わず見惚れてしまった。


グレーを基調とした浴衣は兄ちゃんにぴったりだ。


いつもは見ることない姿にドキドキと心臓が鳴る。



「あ、遅かったね。ちゃんと着られた?」


兄ちゃんは近付いてきて僕を見下ろした。



「うん、やっぱり翔太にはその色で正解だったね。」


微笑んで頭を撫でてくる。

僕の大好きな手。


「翔太?どうしたの?」
「……格好いい。」
「………え?」


兄ちゃんの目が丸くなるのを見て、僕は思わず口を手で覆う。


まずい……今普通に口に出してた……。


「……馬鹿だなぁ、翔太は。」


どこか明後日の方向を見て、溜め息を溢す音が聞こえた。



「本当は翔太と夏祭り楽しんでからって決めてたんだよ?」
「ぇ?」
「わたあめだって、りんご飴だって、翔太の欲しいものいっぱい買ってさ。」
「に、兄ちゃん?」
「そりゃあ下心もあったけど」



あったんだ……。



「でも、全部翔太を楽しませてからって決めてたのに……翔太は悪い子だね。」
「……ぅ、え!?」



突然頭の後ろに回ってきた手に勢いよく引き寄せられ、
視界の陰りを感じた瞬間、唇に柔らかな感触が触れた。


目の前には端整な顔立ちの兄ちゃんがいる。