不適に笑った兄ちゃんの指先が伸びてきて、僕の唇に触れた。
「勉強一回で、キス一回。」
「…………え……………」
兄ちゃんの顔は笑ってる。
僕は…
僕はどんな顔してる?
「なーんてね。冗談だよ、冗談。」
「そ、そうだよね。兄弟でキスなんてあり得ないよね!」
「――そうだね。じゃあ俺はバイトだから。」
「あ、うん……いってらっしゃい。」
「そうそう、これからバイト忙しくなるから家に帰るの遅くなるけど気にしないでね。」
「うん、分かった……。」
片手をひらひらと挙げて、兄ちゃんは部屋を出ていった。
兄弟でキスなんてあり得ない。
うん、そうだよ。
当然だよね。
でも………
ちょっとだけ期待した。
兄ちゃんなら
『そんなこともないけど?』って言うかと思った。
冗談でも、そう言ってくれると思った。
自分で言ったけど、肯定されたことがなんかショックだ。
「あー…本当、つらいなぁ」


