☆  ☆  ☆



 展望台の下で気を失っている彩に近づき、諒はその身体をそっと抱き起こした。


「彩」


 大丈夫か、という言葉が出てこないくらい、彩は傷ついている。


「バカ・・・また、無茶したな」


 呟くと、彩はうっすらと目を開けた。


「・・・諒・・・?」


 少し驚いた表情を浮かべ、彩はそれからすぐに笑みを浮かべた。


「何だよ・・・今回やけに早いじゃん、帰ってくるの」
「呼んだだろ、俺のこと」
「呼ぶわけないだろ」


 諒はそんな彩におかまいなしに彩を抱き上げると、そのまま歩き出す。
 彩はいいから下ろせと暴れる。
 歩ける状態じゃないだろ、と諒。


「いいからじっとしてろ」


 少し強い口調で言われ、彩は少しだけ大人しくなる。
 そら耳なのか、ごめんな、なんていう諒の言葉が聞こえたような気がした。


「・・・?」


 彩は、無言で諒を見つめる。