だが、一刻も早く帰って、今の状況を何とかしないと。
 どうしてこんな時に限って、悠も諒もいないんだろう。
 いや、もしかしたら相手はそれを見越して、わざとこのタイミングで襲ってきたのかも知れない。
 色々なことが頭の中を巡る。
 店が見えてきた。
 もう少し走れば。早く・・・早く!


「・・・!?」


 美樹は店の方を見た。
 また、景色が歪んで見えている。
 しかも店全体が、薄いもやのようなもので包まれていた。


「なんだろう・・・?」


 走りながらも、美樹は何か嫌な気配を感じていた。
 そして、その気配は。


(・・・後ろ?)


 立ち止まって、振り返る。
 そこには、あの女が立っていた。
 まだ息があがっている。
 彩はどうしたのか・・・まさか。


『・・・鍵・・・』


 女は美樹の方へ手をのばした。
 思わず一歩、後ずさる。
 心臓が跳ね上がる。
 だが美樹は胸に手を当て、アヤカシを睨み付けて、息を整えた。
 今、自分に出来ること・・・戦う力も何もないけれど。
 簡単にやられる訳にはいかない。
 彩も、全力で戦ってくれたのだ。
 意地でもこの状況をどうにかしてやる。