さっきまでとはうって代わり、容赦のない攻撃。
 これじゃまるで・・・。


「もしかして、焦ってる?」


 立ち上がりながらニヤリと笑い、彩は擦り剥いた手の甲をペロリと舐めた。


『人間・・・の、くせに・・・邪魔、するな』


 女が言った。


「おまえこそ、アヤカシのクセに邪魔すんな!」


 言いながら、彩ははっとして身構えた。
 今までと違う攻撃が来る。


「デカっ・・・!」


 跳躍だけじゃかわせない。
 彩は両手で防御壁を作る。
 次の瞬間、彩は物凄い衝撃に弾き飛ばされた。
 そして、展望台の壁にしたたかに体を打ちつける。
 身動きのできない彩を見下ろす位置に立ち、女は冷ややかに、もう一回手を振り上げた。



☆  ☆  ☆



 美樹は店に向かって全力で走っていた。
 思い切り走れば、この距離なら五分もかからないで帰れるはず。
 ――だが。


(どうしたらいいんだろう?)


 安易に考えてしまっていたが、自分が店に帰ってどうなるのか、全く見当もつかなかった。